文科大臣通知「朝鮮学校に係る補助金交付に関する留意点について」に関する書簡

文科大臣通知「朝鮮学校に係る補助金交付に関する留意点について」に関する書簡

 2016年3月29日、文科大臣の通知「朝鮮学校に係る補助金交付に関する留意点について」が、1都2府24県の知事に通知されました。「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する連絡会は、補助金廃止等の差別を誘発しかねない「通知」について、問題点を指摘し、知事が本当の意味で留意すべき点を伝えるべく、各知事宛の書簡を送付しました。

*文科省「通知」についてはこちらからご覧ください。

*書簡については、本ページで全文をご紹介しているほか、こちらからダウンロードしていただくこともできますので、ご活用くださいませ。

*また、この件に関しまして、ヨンピル通信の号外を発行しています。こちらからダウンロードしていただけます。

*なお、アムネスティ日本もこの問題に関して、文科大臣に要請書簡を送ったとのことですので、併せてご紹介します。
http://www.amnesty.or.jp/news/2016/0408_5974.html
 



2016年4月11日

北海道・宮城県・福島県・茨城県・栃木県・群馬県・埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・新潟県・福井県・長野県・岐阜県・静岡県・愛知県・三重県・滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県・岡山県・広島県・山口県・愛媛県・福岡県・各知事 宛

文科大臣通知「朝鮮学校に係る補助金交付に関する留意点について」に関する書簡


「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する連絡会
共同代表:田中宏(一橋大学名誉教授)
共同代表:長谷川和男(元教員)
TEL:080−3930−4971
watasitati2004@yahoo.co.jp


 私たちは、2010年の「高校無償化」制度発足の前後から見られる“朝鮮学校バッシング”が、「朝鮮学校に学ぶ権利」を侵害する恥ずかしい行為であるとして生まれた市民団体です。
 一方には「在特会」による京都朝鮮学校襲撃があり、「朝鮮人死ね・殺せ」などのヘイトスピーチが吹き荒れ、もう一方では、東京・町田市では朝鮮学校生にのみ「防犯ベル」の配布が中止され(私たちが抗議、後に配布)、そして高校無償化からの朝鮮高校除外、さらには一部自治体による補助金カット、そして今次の馳文科大臣の「朝鮮学校に係る補助金交付に関する留意点について(通知)」(2016年3月29日付、以下、「通知」)に至ったのです。そのような「通知」を受け取った知事の皆様に、どうしても留意して頂きたいことがあり、本書簡を差し上げる次第です。


「通知」の背景

 今次「通知」の発端は、去る2月17日、自民党・拉致問題対策本部が、自治体に朝鮮学校への補助金の廃止を求めるよう文科省に働きかけたことです。高校無償化からの朝鮮学校除外の際も、下村文科大臣(当時)は「拉致問題に進展がない」とその理由を述べたのです。残念ながら、日本には「北朝鮮がらみなら、何をしても許される」との風潮が見られ、それが「朝鮮学校バッシング」を生んでいます。
 かつて奪われた言葉、歴史、文化を継承するために、在日コリアンが戦後自力で作り育てたのが今日の朝鮮学校です。そのような歴史的経緯を無視し、子どもの教育を受ける権利をないがしろにすることは、許されないことです。


自治体の果たすべき役割

 「通知」には、「朝鮮学校に通う子供に与える影響にも十分配慮しつつ」とあり、馳文科大臣は「私から、減額とか自粛とか停止とかを指示する内容ではありません」(大臣会見録、文科省HP)と明言しています。しかし、「通知」が公表される前から「北に制裁、朝鮮学校補助金、中止通達へ」(夕刊フジ)「朝鮮学校補助の自粛要請へ」(読売新聞)などの偏向し、誤った報道がまことしやかに流布され、法的根拠がきわめて曖昧な「通知」によって補助金削減・廃止等の差別が誘発される危険があると言わざるを得ません。
 そもそも地方自治体は、国が朝鮮学校の存在を認めようとしないなかで、在日コリアンの「朝鮮学校に学ぶ権利」を保障する上で、積極的な役割を果たしてきました。1965年の文部次官通達が「朝鮮学校は、各種学校として認可すべきではない」とするなかで、法的に権限を有する知事たちは、良識に基づいてすべての朝鮮学校を認可してきました。私たちは、「朝鮮学校に学ぶ権利」を保障するために、引き続き、そして今後ますます、自治体が重要な役割を果たしてほしいと願い、本書簡を送ります。


国際的観点と人権の観点から見た「通知」

 「通知」は、なぜか重要な事柄に触れていません。すなわち、2014年8月の国連・人種差別撤廃委員会の日本報告審査後の「最終見解」には、「パラグラフ19:委員会は、締約国に対し、その立場を修正し、朝鮮学校に対して高等学校等就学支援金制度による利益が適切に享受されることを認め、地方自治体に朝鮮学校に対する補助金の提供の再開或いは維持を要請することを奨励する。委員会は、締約国が、1960年のユネスコの教育における差別待遇の防止に関する条約への加入を検討するよう勧告する。」(傍点は引用者、外務省HPより、以下同じ)とあるのです。
 人種差別撤廃委においても、日本政府は、例によって「朝鮮学校は朝鮮総連と密接な関係にあり、また朝鮮総連は北朝鮮と密接な関係にあると認識しており、教育内容・人事・財政にその影響が及んでいる」などとその理由を説明したが、国連ではまったく通用しなかったのです。委員の発言は、かつての朝鮮学校女生徒のチマチョゴリ切り裂き事件、いまの在日コリアンへのヘイトスピーチなどの文脈の中で、今回の「高校無償化」除外や「補助金カット」を捉えているのです。要するに、国連では「教育を受ける権利」に係わる問題であり、「差別」の問題とされているのです。
 「最終見解」は、さらに「パラグラフ33:委員会は、…パラグラフ19…が特に重要であることにつき締約国の注意を喚起するものであり、締約国に対し、次回の定期報告においてそれらを実施するためにとられた具体的施策に関する詳細な情報を提供することを要請する。」と念を押しています。なお、教育差別防止条約加入問題は、前回(2010年)も勧告されたのに放置し、今回再び勧告されています(因みに、同条約加入国は、2015年2月現在101ヶ国)。また、人種差別撤廃委への次回報告の期限は、2017年1月です。政府は、「実施するためにとられた具体的施策に関する詳細な情報」として、「通知」とその後の効果を、国連にどのように報告するのでしょうか。「通知」には、「総務省とも協議済み」とはありますが、なぜ外務省と協議しなかったのでしょうか。「通知」が国際人権の視点を欠いていることは重大な欠陥というほかありません。
 日本国憲法26条には「すべて国民は、…ひとしく教育を受ける権利を有する」とあり、その「国民」に外国人も含まれると考えられます。なぜなら、憲法30条にも「国民は、…納税の義務を負ふ」とあり、「国民」に外国人が含まれ、同様に納税の義務を負うからです。けだし、教育には多くの税金が使われるのです。日本が1979年に批准した社会権規約13条にも「この規約の締約国は、教育についてのすべての者の権利を認める」とあります。在日コリアンの子どもも、ひとしく学ぶ権利を有していることは明白です。
 朝鮮学校など外国人学校で初等中等教育を受ければ、その子どもたちは日本の公立学校には通わないため、日本学校に学ぶ場合に必要となる公費支出はそれだけ削減されることになります。同じことは、私立学校に学ぶ場合についても言え、そこに私学助成を行うための根拠があります。繰り返しますが、朝鮮学校をはじめとする外国人学校に子どもを通わせる保護者は、日本人と全く同じ割合で税金を納めています。本来なら、国と自治体が、私学助成を外国人学校に適用する等の措置をとり、朝鮮学校に通う子どもを含めたすべての子どもの「ひとしく教育を受ける権利」を保障しなければならないのです。


問われているのは、私たち日本人自身の姿勢

 前に見た「北に制裁、朝鮮学校補助金、中止通達へ」などの先行報道を受け、3月6日の東京・銀座でのヘイトデモは勢いづき、「朝鮮学校解体」を掲げ、迎合して「ご同慶の至り」と声高に叫んだのです。「通知」報道が差別と憎悪を煽っている証左です。
 一方で、2010年6月に公明党が参議院に提出した「外国人学校支援法案」は、「外国人学校が、外国人の教育に関し重要な役割を果たしていることにかんがみ」との認識に基づき、国と自治体による外国人学校支援の枠組みを提示していました(審議未了廃案)。
 また、「救う会・兵庫」なる団体が、兵庫県と神戸市を相手に、朝鮮学校への補助金支給取り消しなどを求めた裁判で、神戸地裁は「(朝鮮学校の)このような教育が、我が国の小中高等学校における学校教育に類する教育に当たるものと評価されて、公認の教育施設としての各種学校の認可を受けていると認めるのが相当である」とし、補助金支給を適正なものと認めて請求を退けています(2014年4月22日民事2部、2015年9月29日最高裁で確定)。
 「問われているのは、北朝鮮の振る舞いではない。日本の中に生きる子どもたちを等しく処遇できない、私たち日本人自身の姿勢である」(2012年3月25日、神奈川新聞寄稿の阿部浩己神奈川大学教授・国際人権法)。貴重な指摘がなされていると思います。
 この書簡に関しては、御手数ですが、「通知」と同じように「域内の市区町村関係部局に対しても、御周知されるよう併せてお願い」することを、付け加えさせていただきます。
  
 


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